俺は今の著作権の在り方に懐疑的である事はこの日記の中でも何回か触れた。その上で金子勇氏(47氏)の考え方には基本的に賛意を感じる。

その上でwinnyを巡る議論が「希望的観測」と「予測」がゴッチャになっている事に苛立ちを感じる。

希望的観測とは金子勇氏が無罪になってwinnyがこれまで通り使える事。これは殆ど望むべくもないだろう。新しく匿名性の高いシステムが導入される事を待つのが良いと思う。もう、winny天国は終わったのだ。その厳然たる事実を直視しなければならない。って事で却下。

予想ってのは司法的判断に基づきどう処置されるか予想する事。その、司法判断にも「希望的な観測」が入り込む。「これが有罪になったらp2p技術の芽を摘んでしまう」云々。これは司法積極論を期待する態度と判断出来る。司法が意志的に法律を解釈し社会の動きに介入する事を期待している。司法は司法の立場を貫くためにこそ頑張って欲しいってのが俺の意見だ。だから司法積極論は賛同しかねる。

んで、参考になるのがこの2項。

Winny作者の逮捕に関して
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2004/05/winny.html

客観的帰属論の展開とその課題
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/99-6/Adachi.htm 抜粋

本来は犯罪者や犯罪行為と無関係な、法的に否認されていない目的の行為という意味で『中立的な』と包括的に表現しうる行為によって犯罪を幇助した場合の処罰の制限に関する解釈論上の根拠について」の問題であるとされる。これは例えば、脱税目的で他人の預金口座に振り込みを行う場合、そのような客の目的を(未必的にであれ)知りながら手続きを行った銀行員について、脱税の幇助の罪責が問われる場合に問題となる。松生教授はこのような行為の処罰を制限すべき理由を、「このようないわば相手を選ばない取引的・業務的行為は、つねに他者の犯罪に役立ちうる可能性を有しているのであるから、故意が偶然につけ加わるだけで幇助犯として処罰されるということになると、処罰の範囲が拡張され、法的安全性が害されるだけでなく、さらに業務に携わる者はつねに自己の行為が犯罪に利用されないよう警戒しなければならず、そのような可能性を認識すれば行為してはならないということになり、社会的な交渉にとって大きな障害となりうる

中立的な行為(winnyの開発)によって処罰されるとなると寧ろ司法はその権力を拡大する事になる。それは慎まなくてはならないって事だろう。司法が司法であり続けるためにこれを有罪としてはならないって事だ。

んで、金子勇氏が中立的で在ったか否かが判断の分かれ目となる。そして、中立的ではないとすればその行為が幇助に当たったかどうかってあたりが争点だろう。
金子氏は違法ファイルコピーを推進する意図は明らかにあっただろうしそれを認めるような発言もしている。発言は自由だし開発も自由。しかし、それらが二つ組合わさったとき、幇助にあたると考えるのが普通ではないだろうか。

「刃物作ったらそれが罪なのか?」って例えが良くなされる。「刃物作ったからこれで殺して来いよ」って良いながら配ったら罪になるのではないかなあ。俺はそんな風に思う。

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あんまり比較対照になってないけどFLMASKって懲役一年、執行猶予三年で確定したんだよなあ。

FLMASKリンク判決要旨
http://lawschool-konan.jp/sonoda/data/fl_link01.html

幇助が認められるためには正犯者(flmaskの場合はエロサイト運営者、winnyの場合は違法ファイル交換をしたモノ)との意志の疎通があったかどうかって事が問われるって事を何処かで読んだ。flmask作者は正犯者とメールのやり取りもしている。winnyは特定の個人じゃないけど2chとかの場所でanonymous(名無しさん)な相手と意志の疎通は在っただろう。意志の疎通が在れば有罪って前例があるからこの場合も有罪になる可能性が極めて高いと思う。

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金子氏にシンパシーは感じているけど執行猶予付きぐらいで有罪になって欲しい。んで、大学なんて辞めちゃってもいくらでも職はあるだろうに。そして、著作権に対するキチンとした議論に繋がればって思う。

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折しも輸入CD禁止法案が審議中だ。これは著作権、作る側ではなくて流通させる側の利権の拡大だ。

あらゆる輸入音楽CDに規制を?
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/12/news054.html

これには勿論反対だし廃案になってくれる事を望む。参議院通過したなんて小耳に挟んだんだけど嘘でしょ?